多くの場合、ムチウチによる症状(痛み、しびれ、頭痛、めまい等)は完治し、健康を取り戻すことができますが、残念ながら、いつまでも痛み等が残ってしまうケースがあります。

 その場合、「局部に神経症状を残すもの」として、後遺障害等級14級9号の認定可能性があります。

 しかし、後遺障害認定の審査方法は診断書等の書面だけを見る「書面審査である」こと、また、ムチウチは「客観的な医学上の裏付けが乏しい」ということが、その認定を複雑にしています。

 具体的には、医学的裏付けが乏しい代わりに、①受傷状況、②治療状況、③症状の推移、④回復の困難性といった要素が重視され、後遺障害が認定されるのは、これら要素において整合性のあるケースということになります。

①.受傷状況

 そもそもムチウチとは、外部からの衝撃により、首がむち打ったように過度に伸縮した結果、首の筋肉、靭帯、椎間板等が損傷することを言います。

 医学的裏付けが乏しい中で、このようなムチウチが発生するような受傷状況であったのかどうかは重要視されます。

 交通事故においてムチウチが発生する典型的なケースは、乗車中、後ろから不意に追突されたという場合です。

 また、衝撃の程度も重要な判断要素であり、衝突した際の車のスピード、車の損傷状況なども考慮されます。

②.治療状況

 継続的に病院へ通院して治療を受けていないと、「後遺障害として認定するほどの症状ではない」等と判断されてしまうことがあります。

 整骨院でマッサージなどの保存的治療を行ってもらう場合でも、定期的に病院へ通うことが必要です。

 また、初診日時も重要です。

 事故から1週間経過後に初めて治療を受けたというようなケースでは、「本当に症状が生じているのか」「生じているとしても、事故による受傷なのか」が不明確である等と判断され、ほぼ認定は下りません。

③.症状の推移

 事故直後から症状固定に至るまで、一貫して、痛みやしびれなどの具体的な症状が生じているかが重視されます。

 当然、その自覚症状は、受傷箇所と整合するものであることが前提です。

 ここで注意すべき点は、先に言ったとおり後遺障害認定が書面審査であることから、症状が生じているかどうかが「診断書」などの書面の記載のみから判断される、ということです。

 したがって、具体的症状については、診断書にきちんと記載してもらうことが必要です。

④.回復の困難性

 後遺障害は、「きちんと治療しても治らず、これ以上の治療も効果がない」ということが前提ですので、ムチウチの場合、最低でも6ヶ月程度は治療する必要があります。

 例えば、事故後3ヶ月で後遺障害等級認定の申請をしても、「まだ治る可能性がある」(回復困難とは認められない)として、認定は下りません。

 また、なるべく客観性の高いテスト(腱反射テスト、筋萎縮検査など)をしてもらい所見が出れば、症状が残存していることの裏付けのひとつとなります。

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